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20代の冒険

20代の頃、ワーキングホリデービザを手に、僕はオーストラリアの大地に降り立った。半年間を過ごしたのは、南オーストラリア州の州都、アデレード。ある日、抑えきれない衝動に駆られ、僕はエアーズロックへの旅を決意する。目指すは、あの巨大な岩の頂。選んだのは、大陸を縦断する壮大な鉄路、ザ・ガン。南氷洋に抱かれたアデレードから、南太平洋への玄関口、ダーウィンを結ぶ特急列車だ。まずは、アリススプリングスを目指す旅路。

 

2,979キロメートルを54時間かけて走るという、気の遠くなるようなスケール。今回はその約半分の旅。ザ・ガンという、冒険心を掻き立てる名の列車は、19世紀後半、未開の内陸部への道を切り開いたアフガン人のラクダ使いに由来するという。その名に刻まれた、開拓者たちの息吹を感じながら、僕は列車に乗り込んだ。

 

システムエンジニアとして就職したものの、息苦しいほどの閉塞感に耐えかねて会社を飛び出した直後だった。何かが違う、そう感じていた。とにかく、今までの自分とは全く違う何かに出会いたかった。その時、頭に浮かんだのがエアーズロック。巨大な、圧倒的な存在に出会いたい。

 

日常の延長線上にはないもの、日本の情報環境では決して得られないもの。そんな場所に身を置いてみたかった。ワーキングホリデー自体が大きな挑戦だったが、今回の旅は、その挑戦の、一つの頂点を目指す旅でもあった。人生は、冒険と挑戦の連続。必要なのは、ただ、勇気だけだ。