僕が風景という言葉を使い始めたのは学生時代です。以来、風景と出会う、ということを心のどこかに置いて生きてきた気もします。人は素敵な風景に出会うと、しばし言葉を失います。眼に映る風景が迫ってきます。その全体性にただ感じて、共にあることを受け入れればいいのだと思います。
江戸時代初期に松島、宮島、天橋立が「日本三処奇観」と呼ばれ、やがて日本三景として定着しました。江戸時代は各国(地域)の地理に関心が高まった時代で、『都名所図会』『江戸名所図会』、葛飾北斎の「富嶽三十六景」シリーズなど自然風景への関心が広がりました。
僕は、山派でしたが、最近は海のある風景が落ち着きます。歳を重ね、今の僕は、また別の文脈を海から読み込んでいるのでしょうか。