アメリカの精神分析家、マーガレット・マーラーによって提唱された分離個体化理論 (separation-individuation theory) は、母子の実験室観察に基づいて提示した発達理論です。簡単にいうと母子関係の発達段階にはプロセスがあり、その発達段階の状況によってその後の子供の人格形成に影響を与え、自立した個人が実現されていくというものです。
様々な関係性の問題が3歳までに作られて、無意識下に残り、その後の人生に転写されていく、三つ子の魂百までとはよく言ったものです。精神分析ではこのことに気がつくことにより、体験することにより、自覚することにより、次の段階に進めていくというようなことを行います。
無意識下の葛藤、トラウマを扱っていると、こうした分離固体化のイメージやテーマが表出してくる場合があります。
具体的にはこういう感じです。
分離個体化の過程
正常な自閉期
0~1ヶ月。自己と他者の識別がなく、欲求が内部で全面的に満たされる。
正常な共生期
2~5ヶ月。内部と外部の識別が生じるが、母親とは全能的な一体感を持つ。
分離個体化期
分化期
5~9ヶ月。母親を対象として認識し、母親を特定化する
練習期
9~15ヶ月。基地としての母親、母親から離れ近くを動き回り探索する
再接近期
15~24ヶ月。母親を別の存在として認識し、両価傾向を持つ
再個体化期
25~36ヶ月。情緒的対象恒常性が萌芽し、母親表象が統合化され、母親の不在に耐え母親から離れて他の子どもと遊ぶ
自己の上に人体活動を通じて自我が生まれてきますのでここまでの経験が十分になされていないと、うまく次の段階に行けないことになります。