さて昨日ブイヤベースを作ってなかなか美味しく出来て、感動してふと思い出したのは、昔、南仏で食べたブイヤベースがあまりに美味しかったことでした。
プロバンス(南仏)へは、2度訪れたことがあります。プロバンスに興味を持ったのは、イギリスの作家ピーターメイルの「プロヴァンスの贈りもの」という本を読んでからです。その本で扱うプロバンスがあまりに素敵な場所で、いつか行ってみたいと思ったのです。また主人公が広告マンであったこともありますね。こんな物語です。
太陽の少ないイギリスの気候にうんざりしていたイギリス人が、ヴァカンスで何度も通ったプロヴァンスに移住し、そこでの生活を綴ったエッセイです。個性あふれる近隣住民との交流や地元レストランの食べ歩きの話にとどまらず、家の大改修を依頼したものの、コンクリートミキサーを家に放置されたまま配管業者や空調業者など複数の業者に半年以上待たされて、いよいよ年末・クリスマスを迎えるにあたって一計を案じた顛末など、まるで読者もその場に居合わせたような気分にさせてくれる物語です。広告業界で成功をおさめた著者ピーター・メイルは、35歳でその仕事を辞めて文筆業に専念することにし、40代後半に南仏のプロヴァンスのメネルブに移住してこの本を著しました。
この本は世界的なベストセラーになりました。あの当時の僕は、この本と同じようにいずれ、広告の仕事を切り上げたら、プロバンスのような所に、移住するつもりだったんだ。うわー若き日の記憶を思い出してしまった!
さて、ブイヤベースの味が色々な記憶を思い出させくれました。こうして記憶というのは、他の感覚とくっついていて、時に鮮やかに蘇ります。ロルフィングでも、忘れていた記憶が蘇ってくる方が結構いらっしゃいます。それは自分だけでは思い出せなかった重要な記憶であることが多いです。自分は自分に都合の良い記憶だけを意識の近いところに置いてしまうものです。
人生が同じループに入っている時などは、無意識が忖度しているいい、悪いを突破して、素直に自分を見つめた方がループから抜け出れることが多いです。記憶というのは体のどこかにスイッチが畳み込まれていて感覚刺激が脳を開き記憶が飛び出てくるのでしょうかね。
話はブイヤベースに戻りますが、本場、マルセーユでは、ブイヤベース憲章というのがあるそうです。マルセイユ市が公式に定めたブイヤベースのレシピです。こんなものです。
まず、「ブイヤベースの具材にする魚は地中海の岩礁に生息するものに限定し、海老類・貝類・タコ・イカは入れないものとする」とされています。高級店で出されるようなオマール海老やムール貝を入れたブイヤベースは邪道としているのです。
第二には「具材として入れる魚は最低でも四種類以上とする」こととなっています。魚の種類を増やすことで、より複雑な旨味を重ねるようにしているのです。
第三は「出汁を取る小魚は決められた魚を使うこと」です。同じ出汁を取ることで味の変化を最小限に抑えようという意図があるのです。
第四には「ブイヤベースは短時間で仕上げること」とされています。ブイヤベース(bouillabaisse)の語源は「煮込む(bouill)+火を止める(abaisse)」の合成語であるといわれており、まさに「短時間で強火で煮込む」スープ料理なのです。
なるほど、これによると、エビもイカも入っていた僕の作ったブイヤベースは、正統派のブイヤベースではないみたいですね。次回は正式版作ってみよう!
プロヴァンスの贈り物は2006年に映画化されています。
予告編をシェアします。